
こんにちは。フォークです。
今回はガザ地区とイスラエルの問題について解説していきます。
連日、ニュースで「ガザ」という言葉を耳にします。
イスラエルとパレスチナの間で起きている衝突について、詳しくない方にとっては、

どうしてこんなことになっているんだろう?
と、疑問に思うかもしれません。
実は、日本に住む私たち一人ひとりが知っておくべき、考えるべき大切な問題なのです。
この問題の背景を一緒に見ていきましょう。

ガザとパレスチナをめぐる問題
この物語は、パレスチナという土地に昔から住んでいたアラブ人の人々と、19世紀末に生まれたシオニズムという考え方から始まります。

シオニズムとは、ユダヤ人が故郷へ帰り、自分たちの国を建国しようとする運動のことです。
この考えが広まったきっかけの一つに、「ドレフュス事件」という冤罪事件があります。
1984年にフランスで起こったこの事件で、ユダヤ系のドレフュス大尉が、国家漏洩のスパイの濡れ衣を着せられ、終身刑を宣告されたという冤罪事件です。
フランスのために命を賭けていた軍人ですら、「ユダヤ人である」ということだけで濡れ衣を着せられ、終身刑になる。
この事実は、当時世界各国に住んでいたユダヤ人に大きな衝撃を与えました。ユダヤ人に対する強い差別が露呈されたのです。
この事件をきっかけに、ジャーナリストだったテオドール・ヘルツルは、ユダヤ人には自分たちの国家が必要だと考え、『ユダヤ人国家』という本を出版します。

【出典】法政大学出版局https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-09946-5.html
この本は一部で熱狂的に支持されますが、同時に多くのユダヤ人から冷ややかに見られていました。なぜなら、敬虔なユダヤ教徒にとっては、神が与えた苦難に対し、軍事力で他国を強制的に自分たちのものにすることは、ユダヤ教の教えに反する行為だと考えたからです。
しかし、1897年に開催された第1回シオニズム会議で、パレスチナにユダヤ人国家を作るという決議が、パレスチナの人々の許可なく勝手に採択されました。
これ以降、ヨーロッパからパレスチナへのユダヤ人の入植が本格的に始まります。
1919年の第一次世界大戦終結後、パレスチナは戦勝国であるイギリスの委任統治下に置かれます。委任統治とは、その土地が独立できるようになるまで、別の国に統治を委任するというものです。
しかしイギリスは、ユダヤ人のための国家を建設する方向で動いていきます。
1930年代にナチスが台頭すると、迫害から逃れるためにやむなくパレスチナへ入植するユダヤ人が急増しました。

ナチスは、ドイツで生まれたヒトラーを党首とする政党です。
ユダヤ人を迫害・虐殺する「ホロコースト」を行いました。
中でも強制収容所「アウシュビッツ」で起こった集団虐殺は、歴史上最悪の出来事の1つとして有名です。
1945年、第二次世界大戦が終結し、ソ連がアウシュビッツを解放すると、ナチスによって故郷を追われた大量のユダヤ人難民問題が発生します。
この難民問題に対処するため、1947年に国連総会で「パレスチナを分割し、そこにユダヤ人の国家を作る」ことが賛成多数で採決されました。
これがパレスチナ分割案です。
この案は、パレスチナの土地をユダヤ人国家とアラブ人国家に分け、エルサレムを国際管理下に置くというものでした。
しかし、もともとパレスチナに住んでいたアラブ人にとって、自分たちの土地を勝手に分け与えられるこの案は到底受け入れられるものではありませんでした。
1948年、イスラエルが建国されます。
こうして、パレスチナの人々は戦勝国の政治的思惑により、都合よく扱われてきたのです。
ガザ地区について

イスラエルが建国された1948〜1949年にかけて、ユダヤ人によるパレスチナ人への民族浄化が起こりました。
民族浄化と言っても、そこはもともとパレスチナ人の土地でした。
もともと住んでいた土地が、他国の思惑によって別の国になり、そこに住んでいた人への暴力が起こったのです。
デイル・ヤーシーンという村では、村民100人以上が虐殺されるという事件が起こりました。
このようなことがイスラエル国内のパレスチナ人の集落各地で起こったのです。

こうした民族浄化を「ナクバ」(アラビア語で大災厄の意味)といいます。
ガザ地区は、1948年のユダヤ人国家イスラエルの建国、そしてその後の民族浄化(ナクバ)によって故郷を追われた75万人のパレスチナ難民が逃げ込んできた土地です。
彼らは家や畑を奪われ、難民としてガザに住み着くことを余儀なくされました。
1967年、ガザはイスラエルによって占領されます。
そして2007年からは、イスラエルによって陸・海・空から完全に封鎖され、外界との交流がほとんど断たれてしまいました。この完全封鎖により、ガザの産業は徹底的に破壊されます。
ガザはもともと漁業が盛んな地域でした。しかし、漁に出ればイスラエル軍から銃撃され、漁船を没収され、イスラエルの刑務所へ連行される。
農作物を作ってもガザの外側へは出荷できない。
病気になってしまっても、十分な薬が入ってこない。こうして、ガザ地区には失業者や栄養失調者が溢れています。
イスラムの教え的タブーとされる「自殺」を選ぶ人も増えてきています。
このような状況から、ガザは「天井のない監獄」という言葉で表現されます。
しかし、上記をお読みいただければ、監獄よりももっと凄惨な状況に置かれていることがお分かりいただけるでしょう。
そこに加えて、2023年から現在に至るまで、イスラエルによる攻撃が続いています。
現在、ガザの人口は約240万人。そのうちの7割が、故郷を追われた難民とその子孫です。
ガザ市を中心とする北部の地域は、1平方キロメートルあたりの人口密度が世界で最も高い場所の一つです。この過密な土地に、今まさに無差別な攻撃が続いているのです。

ハマスの誕生
1948年のイスラエル建国から約40年。ガザ地区の人々は、長年にわたるイスラエルによる占領と封鎖の下で、尊厳を奪われ、絶望の淵に立たされてきました。
この長すぎる40年という期間にパレスチナ人たちは痛感します。
「国際社会は、この歴史的不正を解決しようとしてくれない。」
「自分たちで祖国を取り戻すしかないのだ。」
そして1987年、第1次インティファーダ(民衆蜂起)が起こります。この第1次インティファーダを機に設立されたのがハマスです。彼らはイスラム主義を掲げ、イスラエルに対する武力闘争を主張しています。

ハマスの誕生は、平和的な抵抗だけでは何も変わらないという、ガザの人々の絶望と怒りの表れでもありました。
報道を見ていると「ハマスはガザを実効支配するイスラム原理主義組織」という目で見られがちですが、暴力によってガザを制圧しているという見方には誤りがあります。
2006年に行われた総選挙(パレスチナ立法評議会選挙)に勝利し実権を握ったのであり、民主的な方法で政権与党になったのです。
しかし、この選挙結果をアメリカやイスラエルは認めませんでした。
むしろ、「テロ組織であるハマスを政権に選んだパレスチナ人への集団懲罰」として、2007年にガザを完全封鎖します。
2023年〜現在まで続く、イスラエルによる攻撃
2023年10月7日、ハマスはイスラエルに大規模な奇襲攻撃を仕掛けました。
この攻撃は、イスラエル国内で多くの民間人を含む死傷者を出し、大きな衝撃を与えました。
これに対し、イスラエルは即座にガザへの大規模な空爆を開始し、その後、地上部隊による侵攻を進めました。
イスラエルはハマスを壊滅させることを目的としていると主張していますが、その攻撃はガザの民間人を巻き込み、壊滅的な被害をもたらしています。
病院は攻撃され、医療物資は底をつき、負傷した人々は十分な治療を受けられません。学校や住宅は瓦礫と化し、多くの家族が家を失い、避難を強いられています。
水道や電気、通信も寸断され、人々は飢えと渇き、そして絶え間ない爆撃の恐怖に怯えながら生活しています。
先日、今回の攻撃による犠牲者が6万人を超えたという報道がありました(2025年8月現在)。
その8割以上が女性や子どもを含む一般人という報道もありました。彼らは何の罪もないのに、命を奪われ、未来を奪われているのです。

世界保健機関(WHO)や国連児童基金(ユニセフ)は、「ガザの人道危機は前例のない規模だ」と警告しています。
黙っていることはジェノサイド(大量殺戮)への加担である
なぜ、これほどの悲劇が起きているのに、世界は傍観しているのでしょうか?
多くの国々が「停戦」を呼びかけていますが、具体的な行動は限られています。
私たちが知っておくべきは、ガザで起きていることは、単なる紛争ではなく、ナクバ(民族浄化)の再来であるということです。
イスラエルはハマスを標的としていると主張していますが、現実には多くの民間人が犠牲となり、インフラは破壊され、ガザという土地そのものが住めない場所へと変えられようとしています。
これはジェノサイド(大量殺戮)に他なりません。
国連総会決議で全会一致で採決された「ジェノサイド条約」に違反する重大行為です。
しかし、私たち日本人の多くが、この現実を知ろうともしません。
この悲劇を前にして、私たちが「遠い国の話」として黙っていることは、彼らの苦しみを無視し、ジェノサイドに加担するのと同じではないでしょうか。
声を出さなければ、無関心はさらなる暴力と悲劇を招くだけです。
終わりに〜声を上げよう〜
以上、今回はガザ問題について解説してきました。
ガザへのジェノサイドを止めるにはどうしたらいいのか。そして、私たちにできることはないのか。
そう思ったときに、まずはガザについて知ることが大切だと考え、その一助になればと思い、本記事を書きました。
パレスチナ問題の第一人者である早稲田大学の岡真理教授は、ハマスとイスラエルの戦争について著書の中で次のように述べています。
「暴力の連鎖」「憎しみの連鎖」といった言葉に納得してしまい、「どっちもどっち」だと考えて、先に進むことができなくなります。(中略)こうした言葉を使うことによって、結局、出来事を「他人事」にし、声を上げない、無関心でいる側にとどめることになります。―「ガザとは何か(2023)」
無関心でいることは、このジェノサイドに加担することと同じです。
声を上げましょう。「STOP GENOCIDE!」「FREE GAZA!」と。
「FREE PALESTINE!」「パレスチナの国家承認を!」と。

おすすめ書籍
・「ガザとは何か」岡真理
・「中学生から知りたいパレスチナのこと」岡真理、小山哲、藤原辰史



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